2012/01/21

教育を評価すべきか & 橋下行政

大阪市長の橋下徹さんの政治手腕がいろいろと持ち上げられていたり,批判されていたりで久しい.

ちょっとここで気になる意見を述べてみたい.

まず,反対派の意見だけれど,「ポピュリズム」etcという批判はなんかレッテル貼りだけという感じで,中身がないような印象が見受けられるのでパス.

個人的には,橋下氏の教育改革というのが懸念材料だと思う.

詳細に述べると長くなるけれど,個人的に一番懸念しているのが,「実力主義の導入」と「ダメ教師の追放」.

この手の競争は,教育現場には持ち込まない方がよいと思う.

理由は単純で,競争原理を教育現場に持ち込んでも,現場の人間関係がギスギスするだけで,若手の成長の機会が奪われてしまうからということである.

なんだかんだでうまく回っている学校では,それなりに優秀な教員がいるものである.

彼らは,学生だけではなく,若い教員も育てようと積極的な部分があるので,それこそ自分がいろいろ研磨して身に付けてきた秘伝を割と惜しみなく伝授してくれる.

それがうまく引き継がれて,一定数の優秀な教員が再生産され,なんとか日本の教育は回っているというのが現状である.

できる教員からすれば,自分の学生さんたちがかわいいので,同僚が伸びてくれることはそのまま自分の学生さんたちの成長にダイレクトにつながるので,それこそ無償で奉仕していることも多いのである.

こういう現場に競争原理を持ち出すと,それこそ秘伝の出し惜しみと独占によって,せっかく現場で培われた知性が伝承される機会を奪ってしまうことにもなりかねない.

さらに懸念されるのが,人間は,自分たちが競争原理にさらされたとき,自分の研磨ではなく,他人の足を引っ張ることにエネルギーを注ぐ傾向があるということである.

単純に,そっちの方が楽だからというのもあるのかもしれない.

教員間のネットワークが遮断され,お互いの仲が悪い教師集団に教えられる学生に被害がダイレクトに伝わることになる.

これは絶対に忌避すべきことである.

そして,優秀な教員の選別に誰が当たるのかというのも問題である.

仮に教科教育に重点を置くとすれば,先輩の専門教員が若手を評価するという図式になるのであろうが,そこで優秀な若手がいた場合,果たして適当な評価が得られるのかというのが疑問である.

評価する側が,今後自分の地位を脅かしかねない芽を育成するよりは,それを摘む方向に舵を切るであろうという蓋然性の方が遙かに高い.

全く縁もゆかりもない人間が評価するのがいいのであろうが,その手の門外漢は適切な評価を下す目もないのが当たり前である.

第三の選択肢として,学生による評価アンケートというのもあるが,これもよくない.

評価アンケートが適切に機能するのは,学生の知的水準と意識が元から高く,そもそも特殊な教育を必要としない集団に限られる.ボリュームゾーンは,単純に楽をさせてくれて,楽しい話を聞かせてくれる教員がよいと判断するだけのことである.

教育とは,その場で即座に分かるものでなくとも,ずっと何となく疑問として残り続け,考えた末にそれなりの結論が下されるものに価値があることが多いものである.

少々わかりにくかろうが,その価値が卒業後にあぶり出されるような知見を得る機会を提供してくれる教員の芽が摘まれることになる.この種の即興性のなさも,知性と教育の特殊性の一つである.この価値を見いだす機会を奪うべきではないと思う.

要するに,妙な評価制度は導入しないに尽きる.教育現場は,評価制度を導入することによるデメリットと,導入しない事によるデメリットを天秤に掛けるべきである.後者だと確かに堕落する教員が出てくるというリスクがあるが,前者だと,教育の本分という芽を摘むというリスクを背負うことになってしまう.導入しない方にアドバンテージがあるのなら,それでよいのではないかと思うのだが.

ここまでが教育のお話.

話をちょっと戻して,橋下治世の二重行政の解消と,経済改革については,私はわりと評価している.大阪はある程度,ムダを削らないと本当にヤバイという状況になっているのだろうし,経済と人口が停滞している状況では,いかにシュリンクしていくのかということも考慮に入れねばならない.

ただ,彼の話に全面的に乗っかることができないこともある.

人件費その他を抑制するという話はよく分かるのだが,ムダを省いた末に,何かが向上するということは基本的にあり得ない.

あり得るのは,無駄を省いた結果,現状と比べて,それほど損失もなかったという程度のことであろうか.何かを減らして,得をするということはないのである.

それで,ある程度ムダが削減された後,何か希望が持てるようなことはないのであろうか.

橋下治世と彼の持論でいつも気になるのが,ムダを削減した後のビジョンが見えないということである.彼の意見に再建策というものはない.

まぁ,今はとりあえず削減してシュリンクしていくということしか考えていないのかもしれないけれど,それで天下を取っても,将来の展望を持たない政治家が無用の混乱を引き起こしてきたのは世の常でもある.

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