2013/01/06

レ・ミゼラブル

久々に「絶対に観る」と決めて観てきた映画でした.

キャストを見ると蒼々たる面子のように見えますが,基本的に全員オーディションをして決定したらしく,ラッセル・クロウが歌の面で不安があったので落とされそうだったとか,アン・ハサウェイが並々ならぬ意気込みを持ってオーディションに臨んだという話は凄みがありました.

どうもファンテーヌというのは,舞台女優だった母親がかつて演じたことのあった役柄であったらしく,オーディションの最終テスト前には取り乱して泣き出してしまったとか,悲壮感を漂わせるために10キロ減量したとか,役柄に合わせて大胆に髪を切ってしまうとか(売春街に売り飛ばされた時に,髪を売るシーンがある).

監督のトム・フーパーも言っていましたが,この作品はミュージカルを基にした映画なので,台詞の大半が歌という形になっています.

レ・ミゼラブルに触れるのが,この映画が初めてという人にとってはちょっと奇妙に感じられるかもしれません.しかし,ミュージカルのレ・ミゼラブルは,作品全体を通して楽曲が演奏され,それだけで一つの音楽という側面があるので,その部分をなんとか維持したかったという工夫なのではないでしょうか.その意図は外していなかったのではないかと思います.

ストーリーのあるボーカル付きのオーケストラと言えば,納得してもらえるでしょうか.

基となったミュージカルの原形を維持し,それが映像化されることによって,いろいろな側面も見えてきました.

ミュージカルは舞台なので,バリケードを除いてそこまで精巧なセットが組み立てられているわけではありません.ですから,観客はある程度Les Mis(以下,このように略します)のストーリーを知っておかないとわかりにくいという部分もあります.

一方で,ストーリーが頭に入っていれば,後は役者の演技力と観客の想像力を駆使することによって,当時の映像を自分の頭の中で構築するという楽しみもあります.そういう部分では,音楽と歌に依る比重が非常に大きいのがミュージカル.これはこれでそういう良さがある.

一方で,映画は全てが映像化できてしまうので,監督の映像解釈がそのままスクリーンに投影されることになる.つまり,大多数のLes Misファンの頭の中で作られた映像と期待に応えなければならないという使命を監督は背負っている.私に関して言えば,その感覚は完全に一致していました.また,ファンテーヌが出てくるシーンの悲壮感に関して言えば,想像を遙かに超えている部分があり,「圧巻」という言葉がよく似合う.

25周年記念コンサートのDVDは持っていますが(映画を観たその日にまた見直してみた),ファンテーヌが髪を売るシーンはありますが,歯を抜かれるシーンはありませんでした.ただ,これは原作の小説(iBooksで英語版が無料で手に入る)には出てくるシーンのようです.

このシーンを取り入れることで,ファンテーヌの置かれた境遇を強く観客に印象づけることになります.その後に,I dreamt a dreamをハサウェイが歌うシーンが出てきます.テレビCMでもこの予告編が流れますが,監督がこのシーンを切り取ったのも納得.

それと,映画ならではのシーンとして,コゼット,マリウス,エポニーヌの三角関係における手紙の存在も見事でした.コゼットがエポニーヌにマリウス宛の手紙を託した後という絶妙なタイミングでone day moreが流れるのですが,この3人にジャン・バルジャンが加わって,4人それぞれの心情に合った歌詞になっています.こういった「遊び」の部分を見るにつけ,トム・フーパーがかなりレ・ミゼラブルを勉強してきたのだということを思い知らされます.ミュージカルに対するレスペクトが垣間見られたと言っていいのではないでしょうか.

というわけで,いろいろと余韻に浸りたい映画でした.もう一回観に行ってもいいかな.

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